ミカンに限らずフルーツ全般は、リクガメの嗜好性が非常に高いです。完全草食性とされるロシアリクガメであっても、ミカンやバナナを見つけるとすごい勢いで駆け寄ってきてバクバクと食いつきます。
ただ、これらの果実はリクガメ餌として栄養バランスが優れているとは言えないため、与えて良いものかどうか悩んでいる飼育者さんは少なくありません。
ミカン含むフルーツ類は、与え過ぎは明らかに問題を起こすものの、たまにであれば問題ないです。雑食傾向の強い種には副食として、完全草食タイプの種には特別食として与えることができます。
特別食というのは、人間で言うところの「生クリームたっぷりの丸いショートケーキ」のようなもので、ふだんは食べないけれども年に数回は食べるかなといった食事メニューを指します。
我が家で育てているのは完全草食タイプのロシアリクガメですので、ミカンやフルーツは年に数回の頻度で与えています。
今回はミカンおよび柑橘系果物全般について、リクガメ餌としての評価をしてみようと思います。
「ミカン」のカメエサ評価
カルシウム量 | × | 可食部100gあたり 17mg バナナの約3倍の含有量だが、野菜と比べると比較にならないくらい少ない |
---|---|---|
カルシウム/リン比 | × | 1.1 : 1(可食部100gあたりリンは15mg) バナナよりかは優れるものの、バランスは悪い |
嗜好性 | ◎ | とても好んで食べる |
価格 | △ | 旬であれば1個50円くらい |
総合評価 | 28点 | フルーツのなかではヘルシーで良し。ただし常食は厳禁(※完全草食性リクガメの場合) |
ミカンはヘルシーな果物で与えやすい
ミカンはフルーツのなかでは比較的ヘルシーです。リクガメが食べる果物を一覧にし、成分を比較してみましょう。(データーは五訂日本食品標準成分表に基づく)
(100gあたり) | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物(糖質) |
---|---|---|---|
ミカン | 0.5 g | 0.1 g | 12 g(8.8g) |
バナナ | 1.1 g | 0.2 g | 22.5 g(21.4g) |
リンゴ | 0.2 g | 0.3 g | 16.2 g(13.1g) |
メロン | 1.1 g | 0.1 g | 10 g(9.8g) |
イチゴ | 0.9 g | 0.1 g | 8.5 g(7.1g) |
トマト | 0.7 g | 0.1g | 4.7 g(3.7g) |
コマツナ | 1.5 g | 0.2 g | 2.4 g(0.5g) |
高タンパクなエサはリクガメの内蔵に負担をかけますが、フルーツ類は総じて低タンパクであるためこれは問題となりません。脂質についてもほとんど含まれておらず、ヘルシーです。
問題となるのが「炭水化物」で、炭水化物は「食物繊維」と「糖質」とに分けられます。前者の食物繊維については、飼育下では不足しやすい栄養素です。というのも、一般的に市販野菜は野草よりも食物繊維が少ないからです。
後者の「糖質」は、炭水化物から食物繊維を引いたものであり、こちらも生きていくには欠かせない栄養素です。ただ糖質の過剰摂取は肥満や内臓疾患の原因ともなり得るため、糖分を多く含むフルーツの与え過ぎは良くないとされます。(自然下のリクガメも果実や花を食べるため、そこまで神経質になる必要はないです)
ミカンの糖質量は100gあたり8.8gで、これはバナナの3分の1の量です。主要な果物のなかでもイチゴに次いでミカンの糖質量は少なく、それを踏まえるとミカンは比較的リクガメに与えやすいフルーツであると言えます。
ただ、上の記事でも書きましたとおり、比較的糖分量の多いバナナも「与えてはいけない」というわけではないです。たまに与える程度なら問題になりません。
またミカンは成分の88%が水分ですから、ほとんど水のようなもので(と言ったらさすがに語弊がありますが)水分補給を兼ねた特別食にはなり得ます。
ミカン(柑橘類)の酸っぱい成分は大丈夫なの?
柑橘類に特有の「酸っぱい」成分がリクガメにとって大丈夫なのかどうかは、気になる点だと思います。
柑橘類の酸っぱい成分は「クエン酸」と呼ばれる酸味成分で、クエン酸含有量が多いほど酸っぱさを感じます。たとえばレモンはミカンの7倍のクエン酸量を持っています。
クエン酸自体は害のある成分でもなく、またミカンを数粒食べたところで過剰摂取になるとも考えにくいです。
したがって心配はないかと思われますが、強いて言えば「リクガメの味覚に与える影響」は気になるところです。
リクガメがどの程度の味覚を有しているかは未知ですが、食べ物の好き嫌いが激しい点を考慮すると、それなりの味覚は持っているものと考えられます。したがって酸味の強いミカン(柑橘類)は、リクガメの味覚にとって良くないのではないか、という説は否定できません。
なんにせよエサとしての常食は避けるべきで、年に数回与えるくらいで良いものだと思います。
ミカンの外皮を食べさせるのはNG
なお、ミカンの外側の皮を与えるのはダメです。これはリクガメに限らず、猫でもNGとされます。
ミカンの外皮には「リモネン」と呼ばれるオレンジ油の成分が含まれています。猫の肝臓にはリモネンの消化酵素がないようで、リモネンを摂取することで中毒症状が出るケースがあるようです。
リクガメは不明ですが、「猫でアウトな食べ物はリクガメでもアウトだろう」と推測しておくのが無難です。
以上、ミカンのリクガメエサとしての評価を考察してみました。
メインの給餌メニューとしては不適格であるものの、たまに与える特別給餌メニューとしては用いることができます。偏食や肥満に繋がりますから、与え過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
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