リクガメフードはメインのエサにはならない
一般論としてロシアリクガメのような完全草食性リクガメを育てる場合に、リクガメフード(人工配合飼料)は主食にはなりません。
リクガメフード(人工配合飼料)は栄養補給や水分補給のために補助的に用いられます。
リクガメフードはたしかに栄養価が豊富です。しかしリクガメは野生下では「粗食」な生き物であり、カメフードばかりだと栄養の摂り過ぎになってしまうのです。
加えて、リクガメのために作られているわりにはタンパク質・脂質・リン量が多い。着色料・香料・酸化防止剤等が含まれている。リン酸カルシウムを添加するなど、添加物が必ずしもリクガメに妥当とは思えない。カルシウム/リン比やビタミン量が公開されておらず、市販野菜よりも栄養価で不透明な部分が多い……etc といった問題があります。
リクガメのエサで「人工配合飼料よりも野菜」「野菜よりも野草」が理想的だとされるのは、そうした理由からです。
主要なリクガメフードの比較考察
補助栄養食品の目的で使うのならば、リクガメフードは優れています。具体的に、リクガメフードでは以下のような栄養成分を摂取できます。
主な栄養成分
- カルシウム
- ビタミンC
- ビタミンD
- ビタミンE
- カリウム
- タンパク質
カルシウムやビタミンDを手軽に補えるのと、水分が摂れる点は重宝します。水入れから水を飲まないリクガメであれば、水にふやかしたリクガメフードから十分な水分補給が行えます。
ただし原料から逆算すると高タンパクであることが予測され、完全草食性のリクガメ(ロシアリクガメなど)の常食には向きません。雑食傾向のある種への副食としては適しています。
リクガメフードは、主に以下の4社から販売されています。
- スドー トータスフード
- ビバリア レップカルリクガメフード
- ジェックス リクガメの栄養バランスフード
- ヒカリ リックゼリー(いつでも作れる野菜たっぷりリクガメの主食ゼリー)
ここでは上記4製品について比較考察をしていきましょう。
スドー トータスフード
「スドー トータスフード」は私が最も愛用しているリクガメフードです。迷ったらこれが一番おすすめです。
好感が持てるのは「着色料や甘味料を使っていない」こと。嗜好性が変わらないのであれば、着色料を使っているリクガメフードよりも、使っていない本製品の方が安心できます。
加えてもうひとつ評価したいのは、商品パッケージに「本製品だけでなく、野菜等も給餌メニューに加えてバランス良く食べさせてください」といった内容の注意文言が書かれている点。非常に良心的だと思います。「本製品だけでエサは大丈夫、完璧です!」などと謳う製品よりも100倍信用できます。
ちなみに主要な原料はアルファルファという牧草の一種で、ウサギやウシの飼料としてよく使われます。栄養成分としては食物繊維のほかビタミンA、ビタミンK、ビタミンBの他、本品ではカルシウムとビタミンDが強化されています。
基本的には水やお湯でふやかして与えましょう。大きなリクガメ個体であれば、乾燥状態のものでもバリバリと食べます。水分補給をさせるのであれば、ふやかした方がベターです。
100円ショップでカップを買ってきて、カメフードと水を入れて3分も待てば出来上がり。賞味期限も長く、チャックで密封して保存できて便利。野菜のストックを切らせたときにはこのリクガメフードが役立ちます。
我が家で使っているのは700gの大容量パック。正直なところあまり与える頻度は高くないので、1年では使い切れないです。初めは200gのもので良いと思います。色がなく見た目は素朴であるものの、食いつきは良いです。
ビバリア レップカルリクガメフード
「ビバリア レップカルリクガメフード」はうちのカメがまだ小さかったとき(甲長3cmくらい)に、お世話になったカメフード。小粒なので子ガメでも食べやすいです。色と香りが結構ついており、嗜好性は極めて高いと言えます。ペットショップでもこのカメフードを使っていました。
主な原料は次の通り。
- トウモロコシ
- 大豆
- 小麦胚芽
- リンゴ繊維
- 炭酸カルシウム
- 塩
- ビタミンC
- 乾燥果物(マンゴ、パパイヤ、イチゴ)
- 植物油
- ビタミンE補助剤
- スピルリナ(藻の一種)
- 硫酸銅(食品添加物)
- D-カリウム
- D-ビオチン
原料のリンゴ繊維や乾燥果物はまだ良いとして、トウモロコシや大豆はロシアリクガメ種には向かないのではないかと感ずるところです。
なお「硫酸銅」は乳児用ミルクにも入っているミネラル成分で、爬虫類用のカルシウムパウダーにも一般的に含まれる成分です。多量なら毒となりますがリクガメフードに関しては心配無用です。
「カリウム」は硫酸銅と同じくミネラル、ビオチンは水溶性ビタミンの一種ですね。
サプリメント代わりといった印象です。私的には「無着色料・無甘味料」がはっきりしているスドー トータスフードの方が好きです。
本製品は赤・緑・黄・紫とカラフルなので、リクガメの好きな色が分かる点は面白いです。興味深いことに我が家のリクガメは紫色を最後に残す傾向があります。
(スドーの製品よりも、ビバリアのは小粒。子ガメにはちょうど良い大きさ)
ジェックス リクガメの栄養バランスフード
「ジェックス リクガメの栄養バランスフード」は写真のとおり、見た目や大きさはビバリアのレップカルとほとんど同じです。異なる点としては、本製品には「紫色」が入っていません。
嗜好性は他のリクガメフードと変わりません。よく食べます。
主な原料は
- トウモロコシ
- 大豆ミール(大豆粉末)
- 小麦
- 小麦ふすま(カルシウムと食物繊維が豊富)
- その他各種カルシウム、ビタミン、カリウムを添加
以上のように、主要原料もビバリアと大差ありません。原産国はタイだそうです。
添加物としては着色料・香料・酸化防止剤を使用しています。気になる点としては、添加物に「リン酸カルシウム」を含んでいるところでしょうか。リクガメのカルシウム剤は、リンを含まない「炭酸カルシウム」の方が望ましいです。※本製品では炭酸カルシウムとリン酸カルシウムとを混ぜて添加しています。
「リクガメの毎日の健康食!」とパッケージには書かれているものの、本品を毎日与えるのはやや不安が残ります。もっともたまに栄養補給で与えるくらいであれば無問題かと思います。
やはり「野菜も含めてバランス良い給餌を心がけましょう」と言っているスドー社の方が信頼できます。
ヒカリ リックゼリー(いつでも作れる野菜たっぷりリクガメの主食ゼリー)
ヒカリ リックゼリーは最近ペットショップで売られているのを見かけて、おやっと思った製品。じつはまだ試していないので、もし試したことのある飼育者さんがいらっしゃれば当ブログのコメント欄で教えていただけると嬉しいです。
完全国産のリクガメフードで、おそらく国産で売っているのはここだけだろうと思われます。カルシウム:リン= 5:1 の比率で配合しているようで、この点も非常に好感度が高いです。この製品については公式サイトの方に詳しい商品説明があるので、ぜひそちらをご参照ください。
(公式サイト)カメ用飼料 リックゼリー|株式会社キョーリン
サイトを見ると、リクガメ飼育のことをとてもよく考えられて製品開発しているのが伝わってきて、なかなか興味を惹かれます。ただコスト的にはふつうにスーパーで市販野菜を買ったほうが安くつくでしょう。また今度試してみたときには、ブログの方でレビューを書きます。
以上、リクガメフード選びのお役に立てれば幸いです。
コメント
またこんにちは。
ゼリー、試したことありますので情報提供させていただきますね。
まず、嗜好性ですがそれなりにあります。野菜をちょっと食べてゼリー食べて野菜食べてゼリーの繰り返しです。真っ先に飛びつくわけでは無いです。
ただ一つ気になるのが、作る時の匂いです。
独特な匂いがして自分としてはすきじゃないです。こう…青汁をすごく濃くしたみたいな匂いがします。
ライトで水分が蒸発したときとかはケージ全体が悪臭に包まれて…です。
粉末状の物をお湯に溶かして作るので水分が多いため夏場はカビが生えてりします(^_^;)
黄色(かぼちゃなど)や赤(トマト、人参)や緑(青菜)がありますが正直みんな大した違いはないです(^_^;)
参考になったら嬉しいです!
リクガメ好きさん
コメントありがとうございます!
情報大変参考になります。
夏場のカビと臭いの件はたしかにデメリットとしては大きそうです。
氷ブロックのように冷凍保存できたら便利だなーと思っていたのですが、公式サイト見たところ冷凍不可のようで……。
タッパに入れて冷蔵庫保存で、食べきれる分だけあげるのが良さそうですね。私も今度試してみます!
4歳のインドホシガメを購入し飼育して早11年。
ペットショップの方に勧められて基本レップカルリクガメフードと水のみ与えてきましたが甲羅は非常に綺麗な上に毎日動き回るほど元気いっぱいです。
恐らくリクガメフードだけで長期間飼育した方が少ないのでリクガメフードだけではダメと不穏な噂が流れているようですが、約10年以上リクガメフードだけで実際に飼育してきて全く問題なかったのでリクガメフードに頼るのも別に問題ないと思いますよ。
コメントありがとうございます!
貴重な飼育情報を教えていただき感謝します。
また記事内容について何か「ここはちょっと違うかな」という部分がありましたら是非お気軽にコメントいただけると嬉しいです。
インドホシガメの子亀2頭を立て続けに亡くして心折れかけましたが、現在はギリシャリクガメ1頭を育てております。
餌は、当初から【リックゼリー】をメインに与え、15ヶ月の飼育期間で、導入時48gだった体重は約7倍の330gに達しました。
カメの種類というよりも個体差に因るでしょうか、箱書きで低いとされたギリシャの嗜好性は当てにならず、我が家は食いつき良好です。
箱書きには他にも【リックゼリーのみで1年以上も育てたホシガメ】の写真が載せられており【ゼリー】単独使用で問題無く育つとのことです。
ただし、野菜との併用を勧める箱書きも確かに見られるため、草食傾向の強い種は、葉菜中心の方が良い結果を得るのでしょう。
いつも、箱書きの2倍量を作り、5mm厚×20mm幅×70mm長の短冊状にカットした欠片を冷蔵庫で保存して6日で使い切ります。
【ゼリー】の他、野草(タンポポ、ノゲシ、オオバコ、シロツメクサ、ハコベ、アザミ等)と大根菜を栽培し、副食として与えて居ますが【ゼリー】と葉菜の比率は、7対3から6対4程度と【ゼリー】多めです。ただし、葉菜しか与えない日もあります。
今のところ、甲羅の形状や堅さなどに問題は生じておらず、順調な成長を見せており、排便や排尿の頻度、尿酸の排泄量も平均的です。
飲み水を与えずとも、ゼリーや葉菜から摂れる水分で足りている様子なのは、毎日の排尿量が多いと感じる点からも明らかです。
カルシウムとリンの比率が申し分ないため、今後とも【ゼリー】中心で育てるつもりですが、成長に伴い食欲が急増しているため、ネックとなるのは【ゼリー】の単価が高いことです。
なお、毎朝、手から食べさせているため、【ゼリー】を餌皿に置くことは殆どなく、夏場に腐敗させたこともありません。むしろ、冬場は感想気味の環境で飼育しているため、餌皿に置くとカラカラに乾涸らびる事は在ります。
浄さん
コメントありがとうございます。詳細な情報を教えていただき感謝します。とても勉強になります。
リックゼリーはカルシウムとリンの比率で言えばコマツナやチンゲンサイよりもバランスが良いですし、優れた人工配合飼料だと思います。
ドッグフードやキャットフードに対して、リクガメフードはまだまだ製品の数が少なく、選択の余地が限られています。リックゼリーのようなユニークな製品がもっと増えてくれたらいいのになと感じる今日この頃です。